ハッピーホワイトデー!

posted by 鈴音 ◆ 2016/3/14 (00:00) [edit]

Screenmemo_2016-03-06-09-03-13
はい、というわけでこんにちは!シナリオ担当の鈴音です!今朝飼い猫に手を噛まれました!
人差し指の先端って地味に痛いよね。まだじんじんするけど私は元気です。利き手じゃなかったのが不幸中の幸いかな…
そんな事はさておき、そしてこちらが今回の結果です!レオンバッドAとウェルシュハッピーが同率一位だったので混ぜるか…とも思ったのですがとんだ悪夢が生まれそうだったので、レオンバッドAはバレンタインでやったしとウェルシュハッピーでホワイトデーする事になりました。なんかふわっとしててごめんね!
それでは続きからウェルシュハッピーでホワイトデー…と言いたいんですがホワイトデー感はあまり無くなりました…どちらかというとホワイトデー記念でウェルシュハッピー後日談的なお話です。ホワイトデー的な話を期待されていたらすみません…
ウェルシュ視点で十年後くらいの二人のプロポーズ話ですー。よろしければ続きからどうぞ! 





 始まりは、久々の友人達との飲み会での事だった。

 恋人ができないと泣く友人の一人を、酒に酔った皆が慰めるいつもの光景だった。それがもう嫁を貰ってるこいつに成功の秘訣を聞け、という具合に俺に水を向けられるまでは。嫁などと言われてもアリスと結婚の約束などしていない、そう慌てて返した途端。 飲み屋の空気が凍った。

 あれほど騒がしかった店内が嘘のように、他のテーブルの奴らまで目を真ん丸に見開いてこちらを見ている。一体、何なんだ。

「は……? お前あの姫さんと結婚の約束、まだしてねえの? 十年も一緒に暮らしてて? 何やってんの?」

 静寂を裂いたのは、親友のアレクのそんな戸惑ったような言葉だった。何やってんの、と言われても。

「いや、アリスは俺を家族だって言ってくれるし、俺もそう思ってる。ずっと一緒にいたい大事な存在だ……って恥ずかしいこと言わせんなよ!」

 酒のせい以外でも熱くなる頬を自覚しつつ、アレクの背を叩けばアレクは恐ろしいようなものを見たような顔でこちらを見ていた。

「つまり、なんだ……十年前のあれから特に進展もせず……付き合ってるかどうかさえ怪しい状態……だと……!?」

 その剣幕に若干引き気味になっていると、ざわざわと周囲からも声が聞こえ始める。有り得ない、そんなバカな、あんなにいちゃついておいて等と動揺する声に混じり神に祈りを捧げる声まで聞こえる。本当に何なんだよお前らは。あといちゃついた覚えはない。

 戸惑う俺の肩をがしりとアレクが掴む。その珍しく真面目な表情に思わずびくりとする俺に、アレクが地を這うような低い声を上げた。

「お前、姫さんの事……アリスちゃんの事、好きだよな」

「あ、ああ……」

 改めて言われると恥ずかしいものがあるが、親友のあまりの真剣さにぐっとそれを堪えて頷く。

「それでずっと一緒にいたいんだろ」

 こくりと頷く。なら、とアレクが肩を掴む手に力が篭もった。周囲から、痛いほどの視線が向けられる。

「結婚だ!!!! お前プロポーズしてこい!!!!!!」

「は、はあああああああ!?」

 驚きの声を上げる俺を構うことなく、酒場に集まった奴らは歓声を上げた。頑張れよウェルシュ、きめてこいなんて無責任な声の中に耳慣れた高い声が混ざっている。

「そうよそうよー! 早くちゃんと責任取りなさいよー!」

 ばっとそちらを見ると、男衆の中で緑髪の女の子が満面の笑みで跳ねていた。アリスの保護者リーフだ。なぜこんな所にと思うが、時計を見ればアリスの稽古の時間だ。大方稽古が暇で、俺の方を見に来たとかだろう。近所だからギリギリ行動範囲内のはずだ。

 いや、どうしてここにいるかとかそんな事はどうでもいい。問題はあのリーフが満面の笑みで、この話を聞いていたことにある。これは、酒の席の話ではどうも済みそうにない。

「いいか、今月……いや、今週中にプロポーズできなかったら俺達が勝手に結婚式を開催するからな。しっかりやれよ」

 そして、そんな冗談のようなことを本気の目で言う街の奴らに追い立てられ、俺は頷く破目となったのだった。

 

 

「なあ、ウェルシュ。今年も綺麗だな」

 二週間に一度の定休日、俺はアリスを連れてあの花畑に来ていた。黄色い絨毯が広がるようなその光景にはしゃぐアリスに、そっと頬が緩む。

 それもこれも、あの日から街の中にいれば誰もがこれみよがしに結婚の話題をアリスに振ったり、俺を影からこっそりと小突いてきたりするためだ。幸い、アリスは気がついていないが正直肝が冷えて仕方がない。

 今日も息抜きのつもりで来たのだが、リーフにお膳立てされ二人きりの花見となっている。リーフはこの一週間、何度もこうして二人きりのシュチュエーションを作っては、後でキラキラした目を向けるのだ。それがあからさまにがっかりしたような顔になるのを何度も見るのも、結構な罪悪感がある。

 ポケットの中で銀細工が得意な友人が作ってくれた指輪を持て余しながら、俺はこっそりと息を吐いた。

 皆が自分たちのためにと張り切っているのは分かっていたし、それはこそばゆいけれど嬉しいと思っている。けれど、今ひとつ俺は踏み出すことができなかった。

 アリスに今までそういう事を言わなかったのは、別に責任を取りたくないなんてふざけた理由ではない。

 ただ、縛るのが怖かったのだ。アリスはなんだかんだ言って王族だ。望めば、いつだって元の生活に戻ることが出来る。こんな庶民の生活から、不便のない生活に戻れるのだ。

 それなのに俺の恋人だとか、妻だとかそんなものになってしまったら本当に、アリスが戻れなくなってしまいそうで怖かった。俺の為に全てを捨てられてしまうのが、俺のせいでアリスを変えてしまうのが怖かった。

 明日で、約束の一週間だ。あいつらはやると言ったらやるだろう。なんとか説得して、期限を伸ばしてもらえないだろうか。

「ウェルシュ」

 呼び声に気がつけば、アリスが目の前に立っていた。アリスは悪戯っぽく笑い、そうして生み出した花を俺へと投げる。雪のように舞い降りるそれは初めて出してくれたのと同じ、高原の花だ。

 青空に散る花の美しさに一瞬、呆けるとアリスは満面の笑みを見せた。

「ウェルシュ、好きだぞ。世界で一番、お前が好きだ!」

 与えられたのは裏表も何もない、真っ直ぐな言葉。突然のそれに、かああっと俺は顔が熱くなる。

「な、なんだよ突然!」

「いや、何。ちゃんとこういう事を言ったことが無かったなと思ってな? 改めて言ってみた」

 まるで何も考えていないと、思いつきだと悪びれなく言うアリスになんだか俺は力が抜けてしまって。同時に悩んでいたのが馬鹿みたいだと、それが無性におかしくなって笑いがこみ上げてきた。

 王族だとか、縛るだとかそんな事は、些細なことで。つまり物事は酷く単純なものであったのだ。アリスが好きで、ずっと傍に居たいのならばそう。

「アリス、俺と結婚してくれ」

 俺はポケットの中のそれを掴み、躊躇うことなくアリスへと差し出す。迷う理由なんて、もう何も無かった。

 アリスは一瞬きょとんとしたような顔でそれを見ていたが――やがて、ぱっと花開くような鮮やかな笑みを浮かべる。

「喜んで」

 そうして、左の薬指へとそっと指輪を通したアリスがたまらなく愛しく思えて、俺は湧き上がる幸福感に頬を緩めた。

 今までのままでも、何も変わらないと思っていた。約束なんてして、相手を縛ってしまうのではないかと怯えていた。けれど、違ったんだ。

「ずっと、一緒にいようウェルシュ」

「……ああ、ずっと一緒だ」

 そう言い切れるのが、そう信じられるのがどれだけ幸福なことか。泣き出したくなるくらいの幸福に浸りながら、俺とアリスはそっと笑いあった。

 

 

 ちなみにその次の瞬間、草むらから街の皆とリーフが歓声をあげて飛び出してきて二人して面食らったのはまた別の話だ。


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