メリークリスマス!!

posted by 鈴音 ◆ 2018/12/25 (21:25) [edit]

めりくり!シナリオ担当の鈴音です!
クリスマスなのに何もないのも寂しいな…というか指切り公開したあとバレンタインとホワイトデースルーしちゃったんだよな…クリスマスもスルーするのはあれかな…と昨日思いまして、指切りのクリスマスを頑張って書きました!ご想像の通り薄暗いクリスマスです!でも小さじ0.5杯分くらいは糖度あるかも…?
そんなちょっと残念な感じですが、それでもよろしければ続きからどうぞー。ふーちゃんのある年のクリスマスのお話です。
****************************

「……うわ」
 冬休みに入って少しして。その日はやってきた。
 もともと入っていた広告をぐしゃりと押しつぶすように、ポストにこれでもかと詰め込まれた色とりどりの包装紙。昼近くに起き出してポストをチェックした俺はその光景に思わずどん引きしつつ、今日が何の日かを思い出した。
「あー……今日か……」
 携帯端末をポケットから引きずり出し、確認した日付は十二月二十四日。クリスマスイブだ。十二月に入ってから街中はずっと緑と赤の装飾にまみれていて、あちこちで騒いでいたので今日がその当日だという感慨は薄かった。
 まあ当日とは言っても本来今日は前日で、明日が本番のはずなのだが。どうにもイブの方が盛り上がっているような気がしてならない。明日の午後には正月の飾り付けに替え始めるところもちらほら出てくるのだろうし。何はともあれくだらない話である。
 今の恋人から入っていた何件ものメッセージの通知がちかちかと鬱陶しいのを無視して携帯をしまい込み、面倒くささに溜息をつきながら俺はポストの中の包装紙を一つ引きずり出してみる。途端に雪崩が起き、いくつかのプレゼントが地面に落ちて思わず舌打ちがこぼれた。拾うのすら面倒だ。いっそこのまま捨ててやりたいが、以前中身も見ずに捨てたら電子機器でも入っていたのかゴミ箱から小火が起きたのでとりあえずそれらは蹴り飛ばすだけにしておく。
 さて、と手にした包装紙をようやく乱暴に破けば、中からは淡いパステルカラーのセーターが顔を覗かせた。広げてみれば、胸にワンポイントのつもりなのかハートマークが踊っている。死ぬほどださい。こんなの、俺が着るとでも思ったのだろうか。よくよく見れば手編みのようで、あちこちに少し不自然な網目がある。重い、重すぎる。そしてこれを匿名で贈る意味がわからない。
 一発目からのあまりの重さに吐き気を覚えつつ、手にしたそれを包装紙と共にぐしゃりと丸めて抱える。毛糸は燃えるゴミで大丈夫だろう。
 さて二つ目は、とポストから引きずり出して包装紙を破れば、今度はクッキーが出てきて俺は顔を顰めた。一枚取り出して、個包装をよく見る。市販品に見せかけているがやはり手作りだ。真顔で包装の上から半分に折ると、中から黒く細長い糸のようなものが何本も出てきた。髪の毛だ。これだから手作りの菓子は嫌なんだ。髪の毛だの血だの、信じられないものを人に食わせようとする。お前らは魔女かなんかなのか。
 全身に鳥肌を立てて、そのおぞましい呪物を先程のセーターと一緒にする。これも燃えるゴミで間違いないだろう。
 もはやすでに何もかもが嫌になっていたが、開けないわけにもいかない。そのまま俺は罰ゲームでも受けているような気持ちで、次々と自称プレゼントという名の嫌がらせを開封していった。
 目が飛んで穴が空きまくった手編みのマフラー。こんなの人に贈るなと思う。これは燃えるゴミ。
 華奢な指輪。どう見ても女物だ。自分の趣味で選ぶな。それに俺の指のサイズに合わねえ。金属だから缶ゴミか?
 うさぎのぬいぐるみ。腹を押すと、『好きです』とか女の声で喋った。録音できるタイプなんだろう。気持ち悪いな。外側は燃えるゴミだろうが、腹の中の機械は燃えないゴミだろうか。分解が面倒でしかない。
 手紙。これが一番多い。なんか勝手に今日の夜学校とか駅前、喫茶店で、待ってますとか書いてるやつがいるが、一方的に人の予定も確認せずにどうしてそんなことができるんだ。もちろん行くわけがない。迷う事なく燃えるゴミだ。
 開けても開けてもそんなものばかりで、正直気が滅入ってしまう。ぐったりとしながら緩慢に足元に落ちていた、最後の包装紙を拾い上げて開く。と、そこにあったのはネクタイピンだった。
「お……?」
 入れ物から取り出して、軽く眺めてみる。シンプルなデザインで、使い勝手が良さそうだ。特に何かメッセージがついているわけでもない。これくらいならば、使ってやってもいいかもしれない。
 最後に手に入れたようやくまともなプレゼントに小さく息をついて、俺は他のゴミを纏めて部屋に戻ろうと踵を返す。
「ふーちゃん」
 と、隣から声をかけられた。花だ。一体いつからそこにいたのだろう。全然気が付かなかった。
「なんだよ」
 何も悪いことをしたわけではないのに、その柔らかな視線が居心地悪くて戸惑う。自然と纏めたゴミを隠すようにしてしまった俺をよそに、花は静かに笑った。
「ううん。見かけたから。メリークリスマス、ふーちゃん。後でケーキ作って持って行くね」
「……わかった。それじゃあな」
「うん、ばいばい」
 花の言葉に頷いて、今度こそと玄関に滑り込む。そんな俺を最後まで、花は見ていた。

 コメント:0 カテゴリ:小話・らくがき

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
作品一覧
【メイン】↑新↓旧

推理×百合ADV

性別選択可恋愛ADV

和風BLADV

ヤンデレギャルゲ

百合ADV

女性向け恋愛ADV

【スピンオフ】↑新↓旧

クロスオーバー4/1クイズ

クロスオーバー4/1ADV

泡沫スピンオフADV

クロスオーバー4/1ADV

クロスオーバー4/1ADV

クロスオーバー4/1ADV

緑の姫君スピンオフRPG

緑&Chloe&指切り4/1ADV

緑(&Chloe+指切り)4/1ADV

緑&Chloe4/1ADV

緑の姫君エイプリルフールADV

緑の姫君ミニゲーム集
記事検索
メッセージ

メールアドレス未記入の場合はブログ記事での返信となります。

名前
メール
本文