メリクリ!2019

posted by 鈴音 ◆ 2019/12/24 (00:00) [edit]

メリークリスマス!ベルカゲのシナリオ担当の方、鈴音です!
 
正直投票お礼SSと被って今年はメリクリ小話間に合わないかと思っていましたが、何とか間に合わせることができましたー!やったー!

今年はメインタイトルで星屑とらぶふぉが公開できたので、せっかくだからとコラボさせたんですが意外とこれが難産でして……何が大変だったかってれんちゃんのマシンガントークと地の文の相性の悪さ……もう二度と地の文ありでらぶふぉ勢は出さないと心に決めました……出演NGだよ……

らぶふぉアンケート初めての試みだったのですが、たくさんの回答とコメントまで頂けてものすごく嬉しいです!皆さんそれぞれ好きなゲームとして遊んでいただけているようでよかったです~!
そういえばベルカゲアンケートも新しく設置させていただきました。トップの上の方にあります!簡単なアンケートで1分くらいで終わるのでぜひぜひふるってご参加ください~!あなたの意見で、次に作る作品に影響があるかも⁉

さてさてそんなわけでお待たせしました!続きからメリクリ小話ですー!
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てのひらに星を



「もうすぐ年末だね、夜。年越しの準備は済んだかい?」
「いや……かーちゃんが掃除しろってうるさくてさー……実は今日も逃げてきたとこなんだよなー……」
「もう、また夜はそんなこと言って。朝ちゃんはちゃんとやってるんだろう?」
「わかってるって! 帰ったらやるよ……」
 つい口を突いて出た僕の小言に、夜が少しだけふてくされながら嫌々頷く。僕の小さな家で行われるそんな年末の、毎年変わらないやり取りの中。
「メッリイィィークリッスマアァァァァーッス!!!!!」
 なぜか突然戸口から謎の単語を叫びながら、見知らぬ人が飛び込んできた。
「何だこいつー!!!!!」
 夜が驚いて絶叫を上げるが、僕は驚きのあまり声も出ない。突然見知らぬ人間が飛び込んできただけでも驚きだが、どこをとってもその人は不審者であったのだ。
 まず全身に着ている、あちこちに白い綿のようなものがついた真っ赤な服。形が僕らの物とはだいぶ違うし、素材もなんだかもこもことしていて得体がしれない。肩に担いでいる大きな白い袋も一体何が入っているのだろう。顔には白いひげのようなものがあるが、どうやら付け髭らしくわずかに見える顔はむしろは幼い。僕らのニ、三歳上といったところだろう。その似合わなさが猛烈な違和感を生み、不審さに拍車をかけてすらいる。
 とにかくもう一から十まで何もかもが不審である。むしろ不審でしかない。
 あまりの異様さに夜と二人、遠巻きに見ているとその人物の後ろからまた人が二人入ってくる。
「おい、れん。急に駆け出したと思ったら。なーにガキいじめてんだ」
「……かわいそう。れん、人の家にきて礼儀知らず」
「ええええー!? いじめてないよー!」
 現れた男女は、ぽこぽこと抗議する不審者──れんへと揃って呆れたようにため息をつく。雰囲気や顔立ちが似ているから、もしかしたら兄妹なのかもしれない。こちらもまた奇妙な服装で、鹿のような角のついた全身茶色い服を着ている。首につけられた鈴と飾り紐が愛らしい。年頃はれんと同じくらいだろうか。
 しかし、この二人にも僕は見覚えがなかった。そもそもこの里で、知らない人間というのが信じられない。それなりに広い里だから接点の少ない人は確かにいるが、だいたいの人は見たことぐらいはある。それに、こんな印象の強い人間ならば忘れることなどありえない。
 ならば里の外から……?いや、それこそありえない。里の外なんて、人間が生きていけるはずがないのだから。
「なー、お前ら何なんだよ。俺たちになんか用か?」
「夜……やめなよ、こういうのは関わらないほうがいいって……」
 間の抜けた三人のやり取りに警戒心が緩んだのか夜が問いかけるのを、僕は腕を軽く引いて止めようとする。変な人には関わらずにそっとしておくのが定石だ。下手に突いて絡まれたらたまったもんじゃない。
 だが、時すでに遅し。夜の言葉にばっとれんがこちらへと振り返ってしまった。
「そう! あのねあのねあのねっ、今日ってクリスマスじゃん? クリスマスでしょ? クリスマス以外の何物でもないよね!?」
「はっ!? えっ、えっ!?」
「くりすますって……なんのこと……?」
 突然身を乗り出してまくしたてるように言われ、僕らは戸惑うばかりだ。まるで周知の事実のように言っているが、初めて聞いた言葉だ。なんのことだか全くわからない。言い方からして行事か何かだろうか。
「えーっ! クリスマス知らないの!? クリスマスだよ、クリスマス! く・り・す・ま・す!」
 僕らの戸惑いをよそに、れんはまだまだまくしたてる。と、突然その後頭部が男にはたかれた。
「どんだけクリスマス主張してんだよ! 胸焼けするわ! ガキが引いてんだろ!」
「いたたた……ちーちゃんってば横暴なんだから……。ボクの灰色の脳細胞に傷でもついたらどうすんのさ……全人類の損失だよ?」
「テストの点数百花より低いくせに、よくそこまで言えるよな……」
 うらめしげなれんにちーちゃん、と呼ばれた男は胡乱な目でれんを見る。そんなどこか間の抜けたやり取りをただ眺めていると、僕たちの肩を女の人がそっと叩く。
「……クリスマスはね、私達の世界でのお祭り。ケーキ……えっと、甘いお菓子とか食べたり、子供たちはプレゼント……贈り物をサンタさんっていう人からもらうの」
「へー、いい祭りだな!」
 『お菓子』や『贈り物』の言葉につられて、ぱっと夜の顔が明るくなる。けれど僕は、他の言葉にぎゅっと眉を寄せた。
「『私達の世界』……? それじゃ、まるでこの里以外に世界があるみたいじゃないか。そんなのどの本にも載ってないだろう」
 僕の問いに、女の人は少し困ったような顔をする。
「……えっと、それは……私としても同じ気持ちなんだけど……ほんとになんでかわからないんだけど、でもれんがここに連れてきてるってことはそうなってるから……改めて言われると、ほんとになんでこんなことに……?」
 しどろもどろに説明しようとしたものの、女の人も結局よくわかってないらしい。ついには頭を抱えてしまった女の人に、れんが勢いよく飛びつく。
「細かいことは気にしなーいの! 若い頃からそんなに考え込んでたらハゲちゃうよー?」
「……ハゲ……っ、ハゲない……! いい加減なこと言わないで」
「諦めろよ百花、れんのやることいちいち考えてたら身が持たねーよ……知らねーけど着いたんだから、別の世界もあるってことにしとこーぜ」
 れんの言葉に少し慌てた女の人が、すぐに唇を尖らせた。そしてそれを男の人が諦めた顔で宥める。どうにもこの三人は仲が良いらしい。気を抜くと延々と漫才を見させられてしまいそうだ。
「なー、それで結局お前らって何なんだよ。せめて名前くらい教えろよな」
 夜もそう思ったのか、ややげんなりとしながら三人をせっついた。
 そう、さんざん騒ぐだけ騒いでいながら、この三人は未だにきちんと名乗ってすらいないのだった。本当に何なんだこの人達は。
 僕も夜と同じような顔をして三人を見やれば、れんはきらりと瞳を輝かせてふんぞりかえる。
「おっ、気になるかね少年! ふっふっふ……ボクこそは全銀河を統べる、愛と美の至高! その名も──もがっ」
 そうして直後、男の人によって口を塞がれた。実に鮮やかな手並みである。
「あー、こいつは五十嵐れん。俺は十一千歳、こっちが十一百花だ」
 塞いでいる隙にと、男の人──千歳によって手短に行われた紹介は簡潔でわかりやすい。少なくとも、おそらく行われるはずであったれんの名乗りよりはずっと。
「ぷはっ……うううう……ちーちゃんってばひどい……ボクせっかく口上かんがえてきたのに……」
「……自己紹介くらい普通にやって」
 ようやく開放されるなり嘆くれんを、ため息をついて女の人──百花が嗜める。
「なんかこいつら、いるだけで騒がしいな」
「失礼だよ……って言いたいけど、こればっかりは同感かな……来てからずっと話しているのに、何しに来たのかさえまだわからないし……」
 呆れたような夜の言葉に、僕は遠い目をする。
 別の世界がどうとか言ってたことすらもはやどうでもいい。正直早く帰ってほしいという気持ちでいっぱいである。せっかく夜と二人きりで、ささやかな幸せを噛み締めていたのに。年の瀬のしんみりとした空気が台無しになってしまった。
「はっ! 気がつけばキッズ達の視線がめちゃくちゃ冷たい! サンタさんなのにこんな目で見られることある!?」
「そりゃ、こいつら別にサンタ知らねーし」
「……現状おそらく不審者一択」
 僕達の視線に気がついたれんの悲鳴に、千歳と百花が呆れたように頷きを返す。この二人もれんに振り回されて大変そうだ。なんだかだんだん憐憫の情さえ湧いてきた。
「うっうっ……なんか非難がボクに集中してる気がするし……もう。プレゼントあげればいーんでしょー」
 わざとらしく泣く真似などしながら、れんが背負っていた白い袋を漁り始める。中から出てきたのは、大きな箱だ。どのくらい大きいかというと、開けたら僕達が中に入れてしまうかもしれないくらい大きい。
「でっけー! 何が入ってんだ!?」
 その大きさに、夜は瞳を輝かせ。
「袋の大きさと明らかに見合わないんだけど……どう見ても袋の方が小さいよね……?」
 僕はいともたやすく行われた不自然に首を傾げた。
「まーまー、細かいことは気にしなーいの! ほらほら開けて開けて!」
「わっ、ちょっと。押さないでよ」
 不審感から距離をとる僕の背を、れんがぐいぐいと押す。助けを求めようとちらと千歳と百花へ視線を投げれば、付き合ってやってくれと言わんばかりの視線を返された。二人が止めないというのなら、そこまで危険なものでもない……のか?
「明、早く開けよーぜ!」
 そうして、なぜかわくわくしている夜を見て。僕はようやく観念して、夜と二人箱に手をかける。
「じゃあ、せーので開けるぞ!」
「はいはい、じゃあいくよ。せーの! ……うわっ!」
 夜と一緒に勢いよく開けた途端。箱の中から光が溢れ、たくさんの星が視界を埋め尽くしていく。何も見えなくなっていく中で、れんの声が聞こえたような気がした。
「メリークリスマス! 良い子にはプレゼントだよ!」


「明……明! おい、起きろって!」
 愛しい人が自分を呼ぶ声で、意識が浮上する。目を開ければ、そこには少し慌てたような顔をした夜がそこにいた。
「よ、る……? はっ、そうだあの三人は!?」
 覚醒した途端、思い出した記憶にがばりと身を起こして辺りを確認するが、視界に入るのはいつもどおりの静かな我が家でしかない。
 先程開けた大きな箱もなければ、あの騒がしい三人の影も形も見つからなかった。もしかして僕は、夢を見ていたんだろうか。布団も引かずに、こんなところで。
 少しだけ呆然とする僕の肩を、夜がつつく。振り返れば、何かが握られた手を差し出された。
「夢じゃないみたいだぜ」
 そう言ってそっと開かれた夜の手の中には、あの箱から飛び出した星によく似た銀細工が転がっていた。

 コメント:0 カテゴリ:小話・らくがき

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